日々是長寿庵

材料にこだわるということ。

「ここん芋は厚かけん良かぁ~」

長寿庵ファンの方からよく頂く声です。爽やかな熊本弁が胸を鷲掴みです。いつもありがとうございます!イモが厚くて食べごたえがある、というのはいろんなファンの方からお声をいただきます。

長寿庵のおイモさんは敢えて厚めに切ってあります。しかもおイモさんの中心部分だけを贅沢に使って。なぜかというと芋の外側に行けば行くほど、繊維質(せんいしつ)が多くなり食感が悪くなるからです。食感が悪くなるくらいなら真ん中だけを使いたい。創業者の私の父はそう言います。

一時期、芋焼酎ブームが来た時に加工用のイモも煽りを食らって高騰した時期があったのですが、その時も芋の厚みを変えなかったという姿勢は実は密かな自慢なんです。

菓子屋は材料に手を入れたらおしまい。これも社長の言葉です。社長が創業前に務めていた会社が、利益を出すために量を減らしたり、材料を安いものにした結果、一気にお客さんが離れていったのを目の当たりにしたんだそうです。

「お客様は潮が引くようにいなくなる。絶対に品質で裏切るような真似をしてはいけない」

そう口を酸っぱくして言っています。

そこまで品質にこだわっているのだから、いちばん大事なおいもさんの産地や品質にも当然こだわりがあります。

今日は長寿庵の契約農家さんの一軒、大津町の古庄さんちにお邪魔してまいりました。

高齢化が進む大津町の芋農家の中でも、古庄さんは若手。今日は鳶用のズボンにタオルをバンダナ代わりに、軽やかに1個20kgのコンテナを車に放り込んでいきます。

いきなり団子に最高の芋「高系14号」。高知農業試験場でできたから高系っていうんですよ。でんぷん質が多いため、アルコール製造用に栽培されていたのですが、そのでんぷん質の量のおかげでふかし芋にするとホクホクの食感になります。そのホクホクの食感がいきなり団子に最適のひんしつなんですね。

最近では「紅はるか」という品種が全国的にもてはやされていて、私達も契約農家さんにわざわざお願いして高系を確保してもらっています。紅はるかは長寿庵の「焼きなり団子」にも利用されている品種で、焼き芋には最高の品質なんですが、唯一の欠点が「蒸し芋に向かない」という点なんです。

紅はるかは栽培しやすい、収量が多い、皮の発色がいい、安納芋も裸足で逃げ出す糖度という、まさしく「これまでのあらゆる芋を『はるか』に超える」品質の最強の芋なんですね。そりゃ普通の農家さんであれば収入を考えたら全部紅はるかに変えてしまったほうが合理的なんです。

でも、そうやって無理を聞いてくれる農家さんがいてくれるから長寿庵のいきなり団子は品質を維持できているんですね。皆さんのおかげで商売ができています。ありがとうございます。

いちばん重要な素材なので、芋だけは定期的に社長自ら買い付けに行くようにしています。

今日はちょっと都合が悪かったのですぐに帰ってきたんですが、いつもは農家のみなさんがお茶やスナック菓子を用意していてくれるので10分程度茶飲み話をして帰ってきます。

「今年の芋の出来はどぎゃんですか?」

「今年は雨ばっかでいかんばいた」

「そぎゃんなら堀りはじむっとは9月になっですか」

「そぎゃんなー8月の終わりには試し堀りばしてむっけど掘ってみらんこつにはわからんたいな」

そんな会話を定期的に行って品質を管理しています。

これまで取引していた野菜卸さんや一部の農家さんなどは売ったら売りっぱなし、品質には責任持たないような人達も多かったのです。

定期的にきちんと顔を見せていないと人間ってのは「まぁこのくらいでいいか」となりがちなんですよね。

僕たちはお客様を裏切るわけにはいかない。

だからこそ芋の買い付けまでは自分たちで行うのです。

じゃん!これが芋の買い付けに行くために最近手に入れたTOYOTAのダイナです!

排気量3000ccにターボ付きの冷凍車!ややオーバースペックですが、社長のお気に入りです笑

余談ですが、大津町にはHONDAの工場がある関係で、農家の皆様が使っておられる軽トラはほとんどが”農道のNSX”こと「ホンダ・アクティ」。

個人的には”農道のポルシェ”ことトヨタ傘下に入る前の「スバル・サンバー」が好きなのですが、大津町の芋農家さんのアクティへの信頼度は最高で

「やっぱホンダじゃないといかん」

「ちょっとやそっとじゃ壊れんもんなー」

「〇〇はちょっとしんぼうしとらす人の買う車たい」

との最高の評判。

僕も(次買う軽トラはアクティにしようかな……)と思ったくらいです笑

こうやって長寿庵のいきなり団子は材料の段階から一生懸命作られています。

その品質はお手にとって頂いてご確認下さいね。