長寿庵について

長寿庵が提供できるもの。

先週のことです。まだ西日本の豪雨被害が明らかになる前、熊本もこれから雨がひどくなるかも知れないなぁなんて思ってた、確か木曜日だったと思います。

その日、お気に入りのスリランカカレーを街なかまで食べに行く予定にしていたのですが、せっかく街まで行って、カレーだけ食べてくるのも駐車場代がもったいないなぁ……と思っていました。

やっぱり街なかまで行くのはやめようかな、と考えなおそうとしたところで買いたい本があったことを思い出し、

「カレー屋の目の前に蔦屋三年坂があるから、本を買いに行くついでにしてカレー食べてこよう」

と決めたのです。

会社においてある業務用の軽バンにのって、降ったりやんだりの雨の中、街なかまで向かいました。

程なくして街に到着し、大好きなドライカレーを平らげ、書店に向かいます。最近はリアル店舗で本を買うようにしています。ネットだと買い過ぎちゃうからね。

お目当ての本はすぐに見つかり、さてお会計して帰ろうとしていたところ、ある出版社のフェアをやってるのを見かけました。

「ほーん、最近は出版社のフェアが流行ってるんだよね」と思いつつ近づいてみると「日本経済新聞社」の文字。日経のフェアか。

ラインナップをつらつら見ていると

「たくさんの事例とともに『今の売り方』を学べます」

という帯文句が。

タイトルは「安売りするな!『価値』を売れ!」。

思わず手に取りました。

 

商品やサービスには価値はないと思ったほうがいい

ドキリ。

ずっと頭の中でそう思いながらも、どこかで否定していたことをズバリ言われてしまったからです。

長寿庵のいきなり団子の独自の価値ってなんだろう?

僕がいつも言ってることなんですが、コンビニスイーツもどんどんレベルが上ってきて、そこらにある菓子店とほぼ同等の美味しさになってるという事実。

もちろん長寿庵のいきなり団子が、いきなり団子の中ではナンバーワンであるという自負はあります。しかし、美味しさのレベルが上ってきた現代で「スペック勝負」はお客様にあまりにわかりにくい。

さらに長寿庵のいきなり団子は、同時にピエール・エルメのマカロンやトシ・ヨロイヅカのケーキ、うさぎやのどら焼き、舟和の芋ようかんなどと競争しなければならないのです。

スペック勝負ではあまりに厳しい。

著者はこういいます。

「モノがなかった時代は、モノそのものが価値を持つ『名詞の経済』だった。モノが充実して成熟した経済ではそれだけではだめになり、企業は付加価値をつけて差別化する、例えば「美しい〇〇」や「材料にこだわった〇〇」といったような『形容詞の経済』になった。しかし、現代ではそれすら陳腐化し、顧客に提供できる体験が重要な意味を持つ『動詞の経済』になった」と。

思わず膝を打ちました。上手いこと言うなこの人。

商品そのものにはもはや価値がない。僕たちはここをスタートラインに、どういった価値をお客様に提供できるのか、ということを考えなければならない。

私たち長寿庵のコーポレートスローガンは「ふるさとを、届けよう。」というものです。

これは僕が東京から帰って、まだ1-2年くらいの時に設定したスローガンです。

長寿庵のいきなり団子を買っていただくことで、お客様にふるさとの素朴な味を感じてもらおう、日本の原風景を体感してもらおうという趣旨で僕が考えました。

僕はいま、このスローガンをアップデートする必要を感じています。

いや、もっと正確に言うなら、もっと会社の隅々までこの考え方を浸透させるということでしょうか。

お客様が遠目に店舗を目にしたときに「あ、なんか感じが良いな」と思っていただけるような設計に。

お客様が来店されたときに「ホッとするなー」と思っていただけるような接客に。

お客様が商品を購入されて召し上がっていただいたときに「美味しいな」と思っていただけるような商品力に。

お客様があの店舗はどういう会社なんだろうか、と思っていただけるような「公式サイト・パンフレット」といった発信力に。

お客様がまた行ってみようと思って再来店していただけるような「お客様の体験」の最大化をしていきたいと考えています。

現代では「モノ」はAmazonや楽天といったオンライン上でいくらでも安く買えます。しかし、大手オンライン通販サイトはお客様の「ものを買う」という体験を徹底的に省力化・効率化した結果、お客様は逆に「体験」というものを重視されるようになったのではないか。僕はそう考えています。

そういった中で、僕たち長寿庵は「お菓子を通じて、オンライン・オフラインを問わずステークホルダーとの関係を再定義する」。おっ、ちょっとスタートアップぽい言い回しができました。

僕がここでステークホルダーといったのは、会社はお客様だけの存在ではない、と考えるからです。

製造スタッフがいて、販売スタッフがいて、お客様があり、金融機関や納品してくれる取引業者、SNSのフォロワーさんや近所の人、そして僕たち経営陣や株主。ステークホルダーというのはこれほど多様に会社を取り巻いています。

長寿庵に関係するすべての人に特別な体験を。

長寿庵はステークホルダーの皆様との関係をオンライン・オフラインで再定義し、社会に不可欠な存在として価値を発揮していきたい。そう考えています。