本日のお便りは兵庫県にお住まいの匿名様から!
持ち帰ってきてくれたいきなり団子は少し温かくてほっこりする味でした。
黒いきなり団子ははじめて食べました。
とてもおいしくて再び自分で購入したい……と思いました。
季節によって芋の種類は変わるのですか
何度か食べましたが、芋の固さや甘みが違った気がしました。
匿名様お便りありがとうございます!
何度か食べていただいたとのこと、ありがとうございます。
匿名様のご指摘の通り、実はいきなり団子は季節によって芋の味や固さが異なります。
サツマイモの甘味のもととなるものはデンプンです。
デンプンがサツマイモ自身の酵素によって分解され、糖になります。これがサツマイモの甘味なんですね。
サツマイモは貯蔵する期間が長いとデンプンが酵素によってどんどんと糖へと変わっていって甘くなっていくんです。
でも、じゃあ甘くするために長く貯蔵したほうがいいかというとそうでもないんです。
サツマイモのデンプンは芋特有の「ホクホク感」を出してくれる存在。
あまりデンプンを糖化させてしまうと、ホクホク感が失われてしまうのです。
いきなり団子にとってはサツマイモのホクホク感はかなり重要な要素です。
特に最近では、「紅はるか」という品種が多く栽培されており、いきなり団子業界にとってはちょっとした悩みになってるんです。
紅はるかは収穫量・栽培のしやすさ・甘み・色艶どれをとってもこれまで開発されたあらゆるサツマイモを「はるかに超える」存在として近年開発されました。
だから名前も「紅はるか」なんですね。
収量が多いことと栽培がしやすいことは農家さんにとっては大変重要なことで、作付けの半分以上を紅はるかに切り替えてる農家さんもいます。というか大半の農家さんがそうなってますね。
しかしこの「紅はるか」、いきなり団子にするには重大な欠点があるんです。
それは「蒸すとホクホク感があまりないこと」。
紅はるかの糖度は高いです。それはすなわちデンプンが糖化されているということ。
しかも紅はるかは貯蔵しているとどんどん糖化が進んで甘くなっていきます。
だから長く貯蔵している紅はるかをいきなり団子に使うと、甘みが強いけどホクホク感があまりない製品ができあがってしまうんです。
いきなり団子に向いているサツマイモはやっぱり「高系14号」。
でもその高系14号もどんどん減ってきていて、確保するのに苦労してきています。
長寿庵では、新いもの季節からしばらくは紅はるかを使い、後半では貯蔵して甘みの増した高系14号を使うようにしています。
そうすることによってなるべく品質のばらつきがないようにすることと、安定的にサツマイモを確保することを両立しています。
とはいっても紅はるかと高系14号ではかなり品種間の差があります。
新いもの季節であれば、紅はるかとはいえ、ホクホク感が強く甘みがそこまでないものになっており、まさにこれが新いもらしさという感じだと思っています。
砂糖を加えて強引に製品を甘くすることも可能なんですが、僕としてはいきなり団子の芋の中身で「季節の移り変わり」を楽しんでほしいなと思っています。
どんな品種、どんな季節でも美味しく作れるのも一つの技術ですが、いきなり団子のように「素材そのものの味」を感じられる製品であれば、それをお客様に楽しんでいただけるようにご提供するのも私達メーカーの役目だと思っております。
匿名様、改めましてお便りありがとうございました!
どうぞ今後共末永く長寿庵のいきなり団子をご愛顧いただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。